2007年9月27日 (木) 東京での独演会

2021年9月19日

今日は、渋谷シネマライズでの独演会。

独演会には珍しく何ヶ月も前から打ち合わせを重ねてきたので、独演会18回目にしてなんだか集大成の雰囲気が漂った今回。

僕達はもう、とにかくお客さんが今までに観た事のないライブを作ってやろうという思い。参考にしたのは大袈裟に言ってしまえばディズニーランド。

ディズニーランドはゲートをくぐるまでのストロークでさえ手を抜かない、お客の雰囲気を盛り上げてくれる作りがそこにはあるのだ。

そこで今回は劇場のロビーから作ってやろうと。

何週間か前に劇場の下見に行った時に、僕はふと思ったのです。

旗を作ろう。

巨大な旗を作って天井から吊るすのです。

お笑いライブじゃ見たことない。そしてその日に縦2m横3mの旗を業者に発注した。

打ち合わせではいろんな意見をさせてもらった。

ライブの帰り道に「あそこのネタがアレだったよね~」「あそこ結構ツボに入ったわ~」という僕の全てを知ったような会話をお客にされるのを想像すると腹が立って、「ただでは帰らしてなるものか」という思い。

そこで制作中の絵本を利用させてもらったのだ。

公演の間にロビーに黒幕を張ってしまい、照明も変えて、40枚の絵を並べる。

公演終り客席を出ると、来た時とはまったく違う景色。

帰り道の話題を分散させる算段。

大事なのはイタズラ心、いつだってあざ笑ってやるのだ。

僕の頭の中はこんなもんじゃない。

そして今回一番大事にした事は、「ファン感謝デーにしない」という事。

ルミネや営業などで散々やっているのだ、単独ライブで機嫌伺ってどうする。

とにかく間違ってもお客が「キャー」なんて声を出さないような雰囲気にしてやろうと。

登場前のオープニングVTRで僕が絵本制作で発狂しているところの映像を流す。

お客はドン引き、そこから始めるのである。

そして僕達は当日を迎えた。

朝10時半には「笑っていいとも」でアルタ入りなので、その前に劇場に行って美術さんとロビーの建て込みの打ち合わせ。

僕が行くとステージではすでにWOWWOWのスタッフさんのカメラや照明や音響のリハーサルが始まっていた。

僕はロビーのイメージを美術さんに伝えて、いいともへ。

いいとも終り、ルミネ出番2回、そして新宿から渋谷と劇場まで徒歩で向かう。

一人で歩きながら口をブツブツ。お喋りのリハーサルがそこで。

すれ違う人には気持ち悪がられたことだろう。

あと数時間後、開演。

夕方前に再び劇場に行った時には、WOWWOWの映像スタッフさんをはじめ、劇場のスタッフさん、制作のスタッフさん・・40~50人のスタッフさんが本場前の劇場を声をあげて走りまわる仰々しい雰囲気。

今回のライブに携わっている人数の多さをあらためて確認し、重圧を感じる。

間もなく劇場に旗が届く。

その巨大な旗を天井から吊るした時には拍手が巻き起こったのだ。

音響チェック、照明チェック、動きチェック、ロビーの建て込み確認。

いよいよライブが始まる。

客入れの様子をモニターで確認。

18歳以下は入場禁止ということもあり、なんとなく落ち着いた雰囲気の客層。

男と女がちょうど半分ずつくらい。立ち見もギュウギュウ、階段通路にまでいっぱいのお客、感謝感謝です。

開演のブザーが鳴って、オープニングVTRが流れる。

発狂する僕の姿に、狙い通りお客はドン引き。

音楽が盛り上がり、僕はステージに出て行った。

キャーはもちろん、拍手もない。

パンパンの客席に人の雰囲気を感じない。皆、僕を観にきたのにだ。

多かったのはノートを取る男の姿。後輩芸人かと思えば、普通のお客。

「面白いことやってみろよ」という声が聞こえるのだ。

やってやろうじゃないか、バカヤロー。

独演会、それはそれは本当に静かなスタートを切った。

5分、10分、まだまだ重い客席。このままじゃライブ失敗。

僕は汗と唾をいっぱい飛ばして喋った。

そしてだんだんハマリだす。

ノートを取っていた最前列の男がペンを置き、手を叩いて笑う。

ざまあみろ。

やっと前のめりになったお客にネタをぶつける、ぶつける。

舞台袖から終り時間の合図が出るも、無視。

僕はこの時間の為に独演会を始めたのだ。

そして僕は大きな大きな声で喋った。

ライブ終了。

客席を出たお客はロビーで立ち止まった。

そこはもう来た時とは違う景色、とまどうお客を僕はカーテンの隙間からニヤニヤ見た。本当にたくさんの芸人が観に来てくれていた事を知ったのもその時。

技術さんの撤収作業中、僕はお客さんがいなくなった劇場の入り口で仰向けになって寝転んだ。

怖かったんだ。本当に怖かった。

今回の独演会を振り返った。

怖かったけど、やらなきゃいけないのが分かっていたからやった。

僕がお客と対峙している時に、どこかでカワイ子ちゃん相手に腰を振っている男がいたのかと考えると羨ましく思うも、今回は僕の勝ち。

2007年9月27日の22時~23時半までの一時間半は、僕が世界中で一番幸せだったという自信があるのです。SEXがなんだ。

今回、このライブに協力していただいたスタッフの皆様とお客さんへ。

今日は本当にありがとうございました。

最近気づいたんだけど僕は寂しがりやだから、ライブという、その繋がりが目に見える環境に放り込まれるとなんだか安心するのです。

そしてそんな僕は薄情で、皆さんがリストラされようが、受験に失敗しようが、恋人にフラれようが、自殺を考えようが・・たとえ皆さんがそんな状況に追い込まれても、その事を知る術もないし、もちろん飛んでいって慰めてやる事もできない。

何もできやしない。

だからせめて、僕がもがいて怯えている姿をさらけ出そうと思うのです。

それは僕が芸人としてできる唯一の他人孝行です。

また面白いことをやろうと思います。

だから、また相手して下さい。

2007年9月

Posted by nsnkouron