2008年9月 6日 (土) ウソのない世界の何が面白い


 

あるところに二ス湖という大きな大きな湖がありました。そこでは昔から恐竜の目撃談が多々。その恐竜の名を村の人々はニッシーと名付け、恐竜の生き残り『ニッシー伝説』が語り継がれていたのです。

しかしそれに反し、「何億年もの昔に絶滅した恐竜が現代に生き残っているはずがない」という学者チームの声もあり、ニッシーの存在を信じてやまない人々との論争は尽きることがありませんでした。

ある日、二ス湖からニッシーを象った故障したラジコンが上がりました。これにより学者チームは「そら、みたことか」と勢いを増し、それでも村のおじいさんは「このラジコンとは別に、ニッシーはいる」と言い張りました。だけれど、だんだんとニッシーの存在が薄れていっているのは誰の目にも明らかでした。

ニッシー否定派の数ある学者チームの中の一つに属するドーナツ博士は、ニッシーの存在を誰よりも理論立てて否定しました。テレビなどに出演してはニッシー存在派の意見の不透明な箇所を片っ端から上げていき、恐竜が現代で存在できない絶対的な理由を上げ、ドーナツ博士はその名を世間に知らしめたのです。

それからというもの、ニッシーの目撃談を語っていた人々の居場所は徐所に狭くなり、学者チームは我がもの顔で二ス湖のほとりを歩きました。

その活動により巨額の富を得たドーナツ博士は、「とどめ」と言わんばかりに、財産の全てを使い果たし、最新鋭の探査機を積んだ探索船100隻を用意した大探索チームを結成しました。あの大きな二ス湖の中の全てを調べるという一大プロジェクトです。とうとう長く続いた論争にも終止符を、人々は思いました。湖に横一列に並んだ100隻の探索船を擁するドーナツ博士率いる大探索チームは意気揚々と探索を開始し、湖の彼方へ消えていきました。

そして案の定、二ス湖にニッシーは存在しませんでした。帰りの船の上で湖の隅々までを調べた証拠データを一つにまとめたドーナツ博士は、「それでは、このデータを捨てましょう」と言い、湖に投げ捨ててしまいました。助手達はたいそう驚きました。

帰航後まもなく会見を開いたドーナツ博士は「突然の高波により、データを湖に落としてしまいました」と言いました。肩透かしをくらった記者団からは「晴天なり。今日はとくに静かな湖、高波など起こるはずがない」という声が上がりました。

「おっしゃる通りです。ただ、恐竜がひょっこり顔を出しましてね、それにより高波が起こったのです」

記者団は唖然としました。

「皆様、今まですみませんでした。私は間違っていました。ニッシーは存在しました。この目で確かに見たのです」

会見を終え、研究所へ帰る車の中でドーナツ博士が助手に一言。

「ニッシーは存在した方が楽しいんだよ」

ドーナツ博士は最初から誰よりもニッシーの存在を信じていたのです。その存在を世間に信じ込ませる為にはどうすべきか?そんなドーナツ博士がうった大芝居により、二ス湖のニッシーは今も生き残っているのです。

・・・例えばこんなウソ。あった方が楽しい。本当を突き詰めて、その先に何も見出せないくらいなら、騙し騙されて、それでもいいのかもしれないと思う。そのウソで誰かの胸が躍るなら、それも正解の一つとしよう。うん、正解なんだよ。

2008年9月

Posted by nsnkouron