2008年10月28日 (火) あの子はゴースト


 

今年も学園祭を何校か回らさせてもらった。学園祭はラブラブ祭だ。大好きなあの子が模擬店でクレープを焼いてくれたり、憧れのあの先輩がギターをかきならしライブでキラキラ。物を買う、ライブを観る・・・そういった理由が一つ乗っかっているから意中の人ともコンタクトをとりやすい。そこで芽生える恋も多かろう。

そんな中、ボクのハートを撃ち抜くのは『お化け屋敷』を提供するグループだ。人通りの多いメインストリートに店を構え、クレープを焼き頭にバンダナを巻いて健康的な看板娘を演じるあのマドンナに対して、人気のない校舎内の二階134教室で、顔面を血みどろにする選択をしたグループが愛しくてたまらないのだ。

学園祭に呼ばれた時は必ず『お化け屋敷』があるかどうかを実行委員の方に聞き、あるのならば必ずお邪魔させてもらっている。先日もそう・・。行けば、まだ準備中らしく本番に向けいろいろと試行錯誤しておられた。学園祭は二日間あるらしく、昨日も『お化け屋敷』は開催されたのだという。昨日の成果を聞いたら残念な返事。昨日はお客さんを驚かせられなかったのだという。何かやり方に落ち度があるのでは?と深く話を掘り下げようとした次の瞬間にその言葉は飛んできた。

「お客さんが来なかったんです」

顔面血みどろの幽霊達は確かにそう言った。ハッキリ言って最悪じゃないか。これだけ身を削り、体を張り、欲を捨て、それをぶつける相手がいないってんだもん。昨日はずっと窓から外の賑やかな模擬店を覗いていたんだと。リアルうらめしやだ。負けるな!幽霊達!・・血みどろの幽霊やらサダコに混じって、腕だけを白く塗った女の子がいた。ボクはその子に話しかけた。「キミの仕事は何なんだい?」、そして彼女は答えた。

「壁から手を出してブラブラ振る役です」

なんと!

彼女ときたら、年に一度のこのお祭りに「手」だけしか参加していないのである。それが誰の手なのか最後までお客さんにわからないまま。少女よ、何故その生き方を選んだ?他の女の子達は模擬店で男子とキラキラ戯れているぞ。いろんな事にいちいち興味が湧いて、質問を繰り返していたら、「一度、体験してみます?」と言われ、なんだか流れで『お化け屋敷』を体験することとなった。電気を消して幽霊の皆が持ち場に着いた。しばらくして・・

「どうぞ~」

遠くから聞こえてきた。お化け屋敷史上初めてではなかろうか?きっと今の「どうぞ~」は準備が整った幽霊達の声だ。そんなことってあるのか・・・いかん、いかん!彼等は必死にお化け屋敷を作っているんだ。挙げ足を取るなんて最低だ。一度頭を真っ白にしてボクは歩いた。間もなく後ろから「ギャー!」と顔面血みどろの幽霊が飛び出してきた・・が、まったく怖くない。なぜなら先程までその幽霊の相談に乗っていたからだ。この幽霊の苦労も知っている。だけどボクがここで驚かなかったら幽霊達の気持ちはどうなる?だから、「おぉ!」・・とりあえず言ったんだ。そんな調子で驚き続け、ゴール手前に差し掛かった時だ。壁から白い腕がブラブラと出ている。

あの子だ。

ボクは立ちつくした。コレがあの子の学園祭で、コレがあの子の青春なんだ。よく見れば手が荒れている。きっとお母さんのお手伝いをよくするイイ子なのだろう。ブラブラブラブラ・・白い腕をひたすら振り続けるあの子。中島みゆきさんの『ヘッドライト・テールライト』が頭に流れる。なんだか胸がキュンとして、ボクはその手をギュッと握りしめた。壁の向こうから「あれっ?」という声がかすかに聞こえた。

学園祭シーズンでございます。皆様、是非『お化け屋敷』に足を運んでください。

エライぞ!お化け屋敷!

2008年10月

Posted by nsnkouron